2011年5月14日土曜日

転移8年と癌死5年のミステリー


こちらに移転しています。
前立腺がん再発治療(癌:局処病か全身病か)
http://ina-takasi.blogspot.jp/2013/02/blog-post.html






癌19年。前立腺がんはもっと晩生で35年で顔がみえると教わってきていたと思う 桃栗3年柿8年癌の実19年 。だが、前立腺がんでは、こと再発となればPSA再発から8年で転移が成立し、癌死にいたるまで5年が定説といわれる。この発信元は『日泌会・厚生科学研究班編/医療・GL(06年)/ガイドライン』であるが、その引用元はジョンズ・ホプキンス大にて1982/4から1997/4にわたり臨床検された報告書http://jama.ama-assn.org/content/281/17/1591.fullにある。


ここでは1977人のRRP(根治的全摘)後のロンタム15年のトレサビリィティで誰しもがネオアジュバンド(術前補助治療)もしくはアジュバンド(術後補助治療)をうけずに試験に参加した。従って外乱的ベクトル(薬物や放射線の細胞組織的)の作用しないピユアーなRRP後の生化学的再発(PSA再発)の評価、即ち『全摘後のPSA上昇とその後の自然誌科学』(Natural History of Progression After PSA Elevation Following Radical Prostatectomy)なるタイトルの報告書である。
果たしてトリックは存在するのだろうか?

このcontextでは前回の 全摘後のPSA再発は約半数でその60%以上は非転移もしくは非がんである。(前立腺がん)とは異なり原文ではRRP後15年でPSA再発は1997人中315人(15.7%)。内11人は早期治療を開始して統計からは除外されている。残りの304人中103人がPSA再発から8年(中央値)で転移(臨床癌)が出現し、転移確定後ホルモン等の治療をうけたが、その5年後(中央値)で44人(108人中43%)で癌死が認められた。とある。なるほど数理上トリックは認められない。

だが、これこそ正にトリックで、304人から転移した103人を除いた 201人(63%)はRRP後15年経過後でも癌の存在が臨床的に認められていない。非転移率はGS7以下で75% GS8以上だと60%。比率的に言えばPSA再発で15年以内に転移判明(臨床癌)されたのは32%に過ぎず、60~75%はいまだに病理的癌の疑いのままである。


トリックとは、本来この60~75%を占める転移の定まらない未知数を解とすべきではないだろうか。・・・。

正解は『PSA再発から無治療した場合で、転移が出現したとしても多数は15年以上であり、32%の人はPSA上昇から8年で転移している。』 が適切ではないだろうか。







2011年5月5日木曜日

『MAB(ホルモン療法)で前立腺癌の転移を誘発促進させるネスチン』について


耐剤性として知られていた『抗アンドロゲン除去症候群 AWS』では投与された抗男性ホルモン剤に応答して結果的に癌細胞増殖を誘発しているのではないかという疑念があった。この問題は東京大学を主幹としたグループで糖タンパク『Wnt-5a』の異常的なプレゼンスを同増殖因子と実証する事に成功した。プレスの内容によるとサイズで1.5倍、細胞数では3倍の増殖である。(2011/3)

では抗ホルモン剤投与により転移能に異変は無いのかと言えばそうでも無く、ネスチン(nestin)と言われるタンパクがアンチアンドロゲンに対応し前立腺がんの全身転移を促している事実を明らかにしている。(ジョンズホプキンス大2007/10)

この発見はいまだ非常に予備的なものに過ぎず、前立腺癌患者や医師はこの療法を中止するべきでないと注意を促しているが、米国に於けるホルモン治療は本邦と異なり低リスクのPSA再発に対して積極的な治療は限定的であり、多くが既に転移を有している患者群に対しては延命的見地からも有効で、意義のある事に他論はない。

然しながら、Low riskのPSA再発の患者には、むしろ、延命を願って自殺を急ぐ結果になりかねなく、早期予測、早期治療の優位性は理解できるのだが、治療開始にはPSA値の判断と、他にも明確な臨床的エビデンスが必要ではないだろうか。


Abstract
Nestin  胎生期にある一過性に発現する神経幹細胞特異的分子。
①小細胞肺がん、乳がん、転移性前立腺癌などに顕著に発現している。
②ネスチンは前立腺癌ホルモン未治療の原発巣株組織には発現していなく、アンドロゲン枯渇などの治療で顕著に出現しだす。
③癌細胞株からネスチンをノックダウンさせれば、転移が1/5に減少。

Detail
In vivo での参考 『苛めると癌は怒る! は本当か?』
http://ina-takasi.blogspot.com/2011/04/psa-psa6.html

『前立腺癌の移動と転移における中間径フィラメントであるネスチンに関連した幹細胞の役割』
http://www.cancerit.jp/xoops/modules/pubmed/index.php?page=article&storyid=200

『前立腺癌の標準治療は癌の転移を促進する可能性ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンター* 2007年10月1日』
http://www.cancerit.jp/xoops/modules/cancer_reference/index.php?page=article&storyid=189

前立腺癌における神経内分泌細胞の発現とその臨床的意義(京都府立医大)
進行前立腺通常型腺癌における神経内分泌腫瘍細胞の存在はホルモン療法にお
ける再燃の危険因子と考えられた。