2012年8月18日土曜日

がん細胞の増殖率は、治療を行うごとに加速。(Fred Hutchinson Cancer Research Center)




何を今更・・・と言いたくなるが、

がん細胞の増殖率は、治療を行うごとに加速する事実を『がん化学療法(抗がん剤)に予想外の現象、タンパク質分泌が増え治療耐性』との表題で5英医学誌「ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)」に掲載した。(2012080612:44 発信地:パリ/フランス
研究チームのフレッド・ハッチンソンがん研究センター、ピーター・ネルソン(Peter Nelson)氏は言う。
「がん細胞がWnt-16bを過剰発現していて、この因子が浸潤や増殖そして耐剤性に関与している。これを制御する事ができれば治療ができるのではないか、予想外の現象であった。」
(2012/8/6)http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2893696/9333620 



東大研究G高橋さゆり氏らによる『前立腺癌の増殖亢進を引き起こすWnt-5a』においてもアンチアンドロゲン治療においてWntシグナル経路を同定し、サイズで1.5倍、細胞数で約3倍増殖していた。(2011/3/7


放射線治療では・京都大学・原田浩 氏ら放射線腫瘍生物学グループが放射線治療後に高悪性度がんが3.5倍に増幅した事実を公表している。(2012/4/18)



ホルモン治療ごとにPSA値(前立腺がん特異的マーカ)の上昇率が加速している事が観察できる。初回の治療後には約3倍の上昇である。(2011/4/23)
http://ina-takasi.blogspot.jp/2011/04/psa-psa6.html 



 




  


























                                                      
                                          

致命的な前立腺NEがんの14%はホルモン治療の既往(治療による誘発)であり、67%は初診からの前立腺NEがん、19%が通常の腺癌とされた混在型としている。
(泌尿紀要 56:49-54.2010年)

以上に述べた不利益は治療により享受される多数の利益に比べ微細としているが、リスクが存在するのは事実で、これらのリスクは治療前に患者に説明すべきと強く思います。




                                                                                                                                                                                                                                                                                                        


                                                                                                              

2012年8月11日土曜日

副作用のない抗がん剤(そして、癌は風邪をひいたのか?ウイルス製剤)



前回の核酸製剤(十数のDNA,RNA核酸断片)は世界の多くで創薬途上にあり、一方、ウイルス治療ではHF-10=三重大学、G47Δ=東京大学、アドベキシン=千葉大学、Reolysin=パトリック・李(カルガリー大学)、2012年には実用化の予定とされていた開発コード『テロメライシン=岡山大』はTV報道もあってか特に有名で、副作用のない抗癌剤として多くのがん患者は期待したに違いない、が、ここにきてアンカードラッグから放射線アジュバンド(もしくは併用?)にシフトしだしている。


テロメライシンは、レオライシンと同様カナダのOncolytics.Biotech.Incによって創薬開発されているが、DNAアデノウイルス5型(エンベロープ無し・増殖能欠損型)をベクターとして、テロメアの活性しているがん細胞のみを風邪ウイルスに感染させてウイルスの持つグランザイムBなどでがん細胞を溶解、或いは細胞自殺を誘引させる。

抗ウイルス薬は不必要で、RNAウイルスに多い突然変異もなく、がん細胞の核内には入るがエンベロープ(スパイク)を持たないので染色体には組み込まれない。
ベクターとしているのでE1領域は除去され、代わりにテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)が組み込まれている。これによってがん細胞以外への感染は無い。


特徴としては、ウイルス感染は一過性とし、がん細胞の分化度を問わない。テロメラーゼ(酵素)が常時活性化している『がん幹細胞』にも有効であると思われる。
フェーズ1試験では安全性は確認済との事ではあるが、前立腺がん骨盤内骨転移ではガン患部へ 局所注入された場合、造血幹細胞への影響が多分に懸念されるがどうであろうか?


レオライシンは白金系抗がん剤抵抗性患者をリクルートしてフェーズ3(大規模)試験を見据えているが、テロメライシンは2008年フェーズ1から既に5年経過して尚、フェーズ3が見えないでいる。

下図は『がんサポート情報センター』からのテロメラーゼ代謝の度合いであるが、前立腺がんで83%、しかしこの数字は大多数の遅進行(がん細胞の代謝が遅い)を占める前立腺がんではtoo bigで、テロメラーゼ活性の望めない緩増殖な癌にはアンカーとは確かになり得ないだろう。

免疫性の反応
抗原提示細胞等による障害はあるが、ウイルスなのでB細胞などによる抗体は産生しない。が、然しCTL(ヘルパーT1細胞記憶)による防御の可能性は否定できない。つまり、炎症反応はあるが、複数回の治療は可能であると考えられる。
CTL記憶がなされてた時点で即耐剤性も獲得されるので、放射線で局所的に白血球を死滅させておくのも有効かもしれない。或いは放射線による増感作用を期待しているのかもしれない。
DNAウイルスの場合はTLR9(トール・ライク・レセプター)で認識され、細胞性サイトカインがTh1細胞を分化させる。
従って、造血幹細胞とともに、炎症性サイトカインが全身治療を困難とさせる原因である。 
免疫からの余談になりますが、日本のインフルエンザワクチンは殆ど効果が無いと言われています。理由は抗原と一緒にアジュバンド(免疫強化物質)が含まれていないためだそうです。
不活化ワクチンや生ワクチンの弱いものにするのが世界の大勢だとしています。



転移癌の50%程にP53(癌化した細胞を死滅させる抑制遺伝子)欠損があると言われている。三重大学のHF-10、 SiBiono社のgendicineは欠失されたP53(タンパク分子量 53k Da)を補いがん細胞をアポトーシスさせる。

G47Δ=東京大学は2011年3月18日被験者死亡事故発生。治験での直接的因果関係はないとし、現疾患の進行としているが、炎症悪化していたのは事実であろうと思われる。
中断無く進んでほしい。
 



参考

発癌性が強力なほど効果的な抗がん剤と放射線治療。そしてレドックス




Note


テロメア:染色体両末端(3‘ 5’)にあって遺伝子損傷保護CAPと思われてきたが、細胞分裂の回数券(ヘイフリィクによれば60回程度の分裂で細胞死する)説が現在の認識である。60回細胞分裂で115京の細胞を複製する。癌細胞の場合はテロメラーゼと呼ばれる酵素の常態活性化でテロメアのチケットが延伸され無限の分裂能を獲得し、癌は細胞死しない。
ヒトではテロメラーゼの活性は無に等しく、あっても微量で生命の根幹である幹細胞や生殖器官で認められるに過ぎない。


 

テロメアの証明:細胞60回分裂説(細胞数115京)があるが、まるでデタラメな説でも無い様である。細胞代謝は赤血球120日、心臓22日、腸管25日、最も頻繁なのが小腸で2日であるらしい(Ⅰ期M24時間G024時間)。成体細胞数(ケラチン化する細胞含め)60兆(実際に代謝があるのはそのうちの1兆/日であるらしい)が2日で総入れ替わりと仮定すれば100年間では360×100/2 ×60兆=108京。 1兆/日説なら60兆では60日で総入れ替えなので3.6京となる。一番タイトな計算ではやはり人の生理寿命は120年か・・・。


 


出典
がんサポート情報センター

参考
がんに対する遺伝子治療の現況と展望(岡山大学・藤原俊義 田中紀章)
ousar.lib.okayama-u.ac.jp/file/13974/120_321.pdf