2013年10月20日日曜日

Dirty Little Secret. 局所再発 と 非浸潤がん



Dirty Little Secret. は何も免疫学に限っての言葉では無い。腫瘍学でも同様である。前立腺がんと死亡率、罹患率、BRCA遺伝子、進展度、骨転移、性扶養性や腺癌等の腫瘍形態が似通っている乳がんでは非浸潤がん(DCIS:基底膜を有する乳管がん。浸潤はないが拡散傾向)は稀とは言え10%強を占めると言われている浸潤能が無いのだから当然転移がない。腫瘍論では上皮細胞で発生した腫瘤(上皮内がん)はやがて粘膜浸潤能を獲得し、転移すると言われている。所謂癌化である。が、しかし、何時頃、何れ程の割合で癌化するかは、多分、世界中の誰もが知らない。何故なら、生命を賭した患者は恐らく医師の処方に従うだろうし、従わない患者達には主治医はこう言うに違いない “ ご家族はそれで納得されているんでしょうか? ” と・・・。

当然、治療拒否した彼ら患者達の予後はデータに収録されていない。


前立腺がんでは
Charles R Pound 達の1999NovでのスタディでPSA再発の無治療で放置して転移まで8年、癌死者の半数は5年(中央値)としたが何れも保険数理確率で実数ではない。それでも再発患者を含め実に治験者の82%が術後15年生存している事実がある。が、乳がんの場合では、浸潤がんへと進展する転帰予測は放置した臨床歴例も自然史も無いので、昔々の天気予測と大差はない。


低分化型がん細胞の血管浸潤傾向に比べ転帰が良いと言われる高分化がんですら、癌細胞は広範囲な分布(DRE:触診不可)をしている病変が多く、低分化に比べ静脈系転移の可能性が高い傾向にあると言われる。この事実は手術の成功率が低い事を意味していて、従って、非浸潤性乳がんでは乳房温存では無く将来の転移を見据えて全切除傾向にある。この事は外科界にあっては極く自然的な潮流と言える。丁度、播種やASAP(小病巣)の拡散した病巣を手術で取り去るに似ている。


しかし、腫瘍組織の大半が遠隔転移出来ない細胞だろうし、何時か判らない、将来癌化するかも知れない細胞があっても微量か、それも久休眠的な存在でしかないのではないか・・・或いは、そもそも非浸潤性がん細胞に何故静脈系転移が可能なのか?非浸潤型(血管内皮に包囲されたクラスター:癌胞巣=団子)転移なのか?それ以前に基底膜の喪失が見られない病変巣(粘膜内非浸潤)を癌とする考えに否定的な意見もある(欧米名dysplasiaで癌と区別している)。ハヤリの言葉では「ガンもどき」かも・・・?


術後のPSA上昇の背景には局所にどの様な細胞があるのでしょう?

私はPSA再発後で局所進展したがん組織の画像(証拠)を一度も見たことがない。Charles R Pound 達のレヴューでも 「organ confinedlocalized disease 」 の言葉はあるが 「局所再発が遠隔転移の前座的役割を担っていた」 とかのリファーもない。
「 局所再発。非浸潤がん。」、これは、腫瘍科医達の Dirty Little Secret. ではないだろうか?