2015年11月15日日曜日

がんもどき VS. 前立腺癌(よい癌D 悪い癌C ICDコード)



食道がん、大腸(結腸、直腸)、肺、皮膚、乳、子宮、子宮頸部、膀胱がん。これらの癌には「がんもどき」が存在している。
がんと言われる細胞に比べ組織的に、そして形態的にも顕著に異なり2相性を保持していて、基底膜の喪失がない。なので播種や細胞外マトリクス(間質細胞stroma)への浸潤がない。つまり転移しない癌で上皮内癌として ICDInternational Statistical Classification of Diseases 国際疾病分類 ではD0~D09に、良性新生物ではD10~D36に分類されている。がん保険の支払上のトラブルもあると言う。しかし、治療は同じだ。乳がんなどでは全摘出だ。


















例えば前立腺の場合のICDコードは悪性ならばC61に、上皮内がんの場合はD07.5に分類されるが、厚労省では国際疾病分類-腫瘍学(NCC監修)第3版(2012年改正版)ICD-O」を使用していて、PINⅢ(悪性前癌病変 上皮内がん)はC61.9とされたが後に登録対象外と訂正された様だ。因みに前立腺肥大症のコードはN40。

そのがんもどきの部位別の比率は・・・?















上のグラフをみて驚いた!子宮で約半数、頸部に限れば65%が非浸潤がんである。0期と診断されても何処かに微小悪性病変(微小浸潤癌と共存)がある。或いは何時悪性化か分からないと言われればママは娘に治療を薦めるし、娘もそう望むだろう。

前立腺がんなどはもう、患者はそこそこ劣化したレベル(年齢)なので半分諦めもつくのだが・・・。

2006年頃から転移しない子宮頸癌の罹患者は右肩上がりで、2015年には軽く見積もっても3万人は超えそうな勢いである。年齢階級別では30~40歳が最多で、平均死亡年齢は1991年から65歳で横ばい。より若い女性のD06が急増している。


子宮頸がんの放置した場合の質の高い自然史はまだ知らない。D06の放置プロセスも不明だし、自然消滅論も私は知らない。
果たしてD06発掘が死亡率低下に寄与しているのだろうか? だが、このグラフは YES とは言っていない。

話が随分外れた。元に戻そう。
では、前立腺のラテント癌や偶発癌は非浸潤型癌なのか? NO 多分、半々 デス。

前立腺がんと診断されれば導管癌で無い限り問答無用に浸潤がんであり、0期と云う概念は無い。2相性の保持に関係無く導管癌ではGS8。つまり全てが悪性なのである。
その理由として、病理学的に上皮内がんと前癌病変(高悪性度:前駆体high-grade PINとの判別が困難とのことで、組織型を上皮内悪性新生物、英語表記PIN3(PIN2を含めて)とされている様だ。
もし細胞診でPIN3と判断されれば再診を薦められる様だが、これはPIN3を浸潤癌の予測因子としていて(プロセスの初期で、最初から浸潤能を所有している癌細胞は存在しないとのコンセンサスが得られていて)時間経過とともに浸潤癌に成長し、やがて転移能を獲得し宿主を死に至らしめる。その癌細胞は100万個(癌塊1mm)で1個位と云われ、現在の医療技術での検出は不可能であり、一方PSA再発後長期間放置でも死に至らない患者やラテントが多数存在する事実を考えると非浸潤癌か、タイムプロセスが遅い細胞群、或いは部分萎縮していた病変の癌誤認の可能性を否定出来ない。

つまり、ラテントがんをも早期発見して治療対象にした可能性を否定出来ないと言う意味である。そして、子宮頸がんもそうであるかも知れない。

下グラフはラテント癌のLNT(非浸潤型)とLIT(浸潤型)の割合


元グラフ

見えない癌細胞を捜し求めて・・・PSA再発(臨床病期Cと病理病期P)




レジュメ:前立腺がん手術後、放置をすれば15%(315人)でPSA再発を認め、その内の34%(103人)は中央値8年で転移が出現し、更に転移後5年で半数が死亡した。結果術後15年での生存率は82%であった。

余りにも有名なcontextである。1982年ー1997年のレトロ調査でジョン・ホプキンス病院の患者1997人を対象として、First author(筆頭)に Charles Pound, MD   Correspond author (コレスポ)がPatrick Walsh, MD として発刊された前立腺がん手術後の自然史の論文である。



PSA再発15%とあるが当時のPSA検出限界レベルは0.2ng/mlであり今の検査とは単純に比較できない。再発リスク順位では骨盤リンパ転移(D1 Ⅳ期)、精嚢浸潤、皮膜外進展であろうか、現在のPSA性能ならば再発は半数であっても驚かない。ここで注目したいのは術前Clinicalと術後Pathologicalの病期評価の変化である。特に皮膜外進展などはNDI(非破壊検査)では未だに困難でCTFDG、MRIに期待できない。放射線治療の5年非再発率は手術と同程度の成績と言うが、精嚢浸潤まで術後にしか分からないこのグラフを観てみる限りそうは簡単に頷けない。


PSA再発315名(11名が加療して304名)、8年で遠隔転移出現103名、その半数が転移5年で死亡したと云う。が、169名のT3a以下のPSA再発は認めても、例え20年先でも転移や死亡者の出現は認め難い。事実、このstudyでは放置15年で発生した遠隔転移者数(D2 103名)はPSA再発D1患者(Ⅳ期)とT3b患者数(135名)以下であり、遠隔転移者全員が死亡したとしてもT3a患者にリスクは強くは及ばない。
なので、PSA再発から8年で転移し、5年で半数が死亡する。は言葉だけが独り歩きしていると云ってよい。

多くの大学病院ではPSA再発率20~30%と言うが、術前と術後の病期評価が異なる以上矢張り素直に頷けない。開けてみれば半数の皮膜外進展は今も昔も普通なのかも知れない。

この論文のCOMMENTでも約半数のPSA再発を想定している。(detectableとは当時のPSA検出限界0.2ng/ml以上と捉えて良いと思います。
Between 27% and 53% of men undergoing radical prostatectomy will have a detectable serum PSA elevation with in 10 years following surgery . 

多くの患者は限局と聞いて再発を夢想だにしていないかも知れない。が、あるのである。PSA再発が。死亡や転移リスクとは縁の浅い、多分別物として。