2015年11月15日日曜日

見えない癌細胞を捜し求めて・・・PSA再発(臨床病期Cと病理病期P)




レジュメ:前立腺がん手術後、放置をすれば15%(315人)でPSA再発を認め、その内の34%(103人)は中央値8年で転移が出現し、更に転移後5年で半数が死亡した。結果術後15年での生存率は82%であった。

余りにも有名なcontextである。1982年ー1997年のレトロ調査でジョン・ホプキンス病院の患者1997人を対象として、First author(筆頭)に Charles Pound, MD   Correspond author (コレスポ)がPatrick Walsh, MD として発刊された前立腺がん手術後の自然史の論文である。



PSA再発15%とあるが当時のPSA検出限界レベルは0.2ng/mlであり今の検査とは単純に比較できない。再発リスク順位では骨盤リンパ転移(D1 Ⅳ期)、精嚢浸潤、皮膜外進展であろうか、現在のPSA性能ならば再発は半数であっても驚かない。ここで注目したいのは術前Clinicalと術後Pathologicalの病期評価の変化である。特に皮膜外進展などはNDI(非破壊検査)では未だに困難でCTFDG、MRIに期待できない。放射線治療の5年非再発率は手術と同程度の成績と言うが、精嚢浸潤まで術後にしか分からないこのグラフを観てみる限りそうは簡単に頷けない。


PSA再発315名(11名が加療して304名)、8年で遠隔転移出現103名、その半数が転移5年で死亡したと云う。が、169名のT3a以下のPSA再発は認めても、例え20年先でも転移や死亡者の出現は認め難い。事実、このstudyでは放置15年で発生した遠隔転移者数(D2 103名)はPSA再発D1患者(Ⅳ期)とT3b患者数(135名)以下であり、遠隔転移者全員が死亡したとしてもT3a患者にリスクは強くは及ばない。
なので、PSA再発から8年で転移し、5年で半数が死亡する。は言葉だけが独り歩きしていると云ってよい。

多くの大学病院ではPSA再発率20~30%と言うが、術前と術後の病期評価が異なる以上矢張り素直に頷けない。開けてみれば半数の皮膜外進展は今も昔も普通なのかも知れない。

この論文のCOMMENTでも約半数のPSA再発を想定している。(detectableとは当時のPSA検出限界0.2ng/ml以上と捉えて良いと思います。
Between 27% and 53% of men undergoing radical prostatectomy will have a detectable serum PSA elevation with in 10 years following surgery . 

多くの患者は限局と聞いて再発を夢想だにしていないかも知れない。が、あるのである。PSA再発が。死亡や転移リスクとは縁の浅い、多分別物として。


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