2012年10月22日月曜日

転移・浸潤・悪性がんは母系遺伝か?  がんは感染するのか?(JST・神大より)




昔々、エデンの園には四つの川があり、一つはハビラ地方にあって川の名はピション、二つ目の川はクッシュ地方を巡り名はギボンと呼んだ。三つ目の川の名はチグリスでアッシュルの東の方を流れていた。そして最後の川はユーフテラスであった。
主なる神はアマダ(土)の塵で人(アダム)を形作り鼻に生命に息を吹き入れて生きる者とした。その男(アダム)から一本のアバラ骨を抜き取り、女(イッシャー)を作った。アダムはこの女の名前をエバ(命、息)と名づけた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。
創世記にある有名なアダムとイヴのくだりの章である。
聖書アラビア起源説からもハビラとはアラビア半島ではないかと思っています。二つ目の川ギボンはナイル川で、クッシュ地方とは、その源流であるビクトリア湖を抱え、映画インデアナ・ジョーンズ「失われたアーク(柩)」の舞台そしてコプト教(原始キリスト教)信者であるエチオピア(アフリカ)ではないかと考えています。

エデンのイヴは人類アフリカ起源説ではミトコンドリア・イヴと呼ばれています。


男性の精子には3種類あって、エッグゲッターと呼ばれる精子が卵子から放出されたリガンドに誘導されて泳いで行きます。推進力は精子の尻尾をふるわせて泳ぎます。卵子に到達した精子は突入すると同時に尻尾を自ずから切断します。
この尻尾はただの尻尾ではありません。男性の細胞核内DNAとは別に独自のDNAmtDNA)を持つミトコンドリアです。
従って子孫に継がれていくのは母(女系)のミトコンドリアだけです。

このミトコンドリアの流れを追跡(遡上)してゆくと人類の始祖はアフリカとなったようです。

エチオピアならばアデン湾と紅海の狭間からアラビア半島に渡ったのではないでしょうか。約6万年前のメルヘンです。アブラムの約束の地カナン迄は約1500マイル程その北(地中海寄り)になります。
 
 
2012930日英科学誌「NatureOn-Line速報版に科学技術振興機構(JST)と神戸大は「ミトコンドリアの機能低下が周辺組織のがん化を促進」としてショウジョウバエをモデルとした研究詳細を共同発表した。

レジュメ
多くの癌には共通してミトコンドリア構造体の機能低下を発現しているが、たった一つの前癌細胞(良性腫瘍)にミトコンドリアの機能低下、それに活性化したRAS(プロトオンコジーン=原がん遺伝子)が加わることでその周辺良性腫瘍細胞もがん化(増殖、浸潤や転移能がある)が促進されるとしている。
RASの機能亢進とミトコンドリアの機能低下は活性酸素を多量に産生させる。その結果炎症性サイトカイン(IL-6)が誘引され良性腫瘍は増殖浸潤転移能を獲得し、がん化する。
同時にがん抑制因子をサイレンシング(阻害)しWntを分泌させがん細胞を増殖させる。

ina
Wnt伝達経路ではWnt-16bWnt-5aの過剰なプレゼンスが癌増進に関与している事実はあったが、酸化ストレスの起因に拘わらずミトコンドリアの機能低下した細胞が分泌するタンパクが周辺細胞ををがん化させる事実は、「癌は母系遺伝」と言ってよいのかとも思います。
また新たな知見として、がん増殖の一因子は、従前の細胞の分裂に加え、がん細胞の隣の良細胞をウイルスの様に癌化させるミトコンドリアに起因する体内部がん感染(こんな言葉は存在しないが)もしくはカスケード(連鎖)と言う説が成立しないか?抄録ではそう理解できるのだが・・・。

もう少し考えてみたいと思います。

 
聖書ではイヴの死因ががんとは記述されていません。ミトコンドリア・イヴと僕の母は全く異なるDNAと思います。
 

Note
ミトコンドリア: 真核生物の細胞内で細胞核外に不定数ある小器官で酸素とグルコースから細胞に必要な運動エネルギーを生産します。細胞の発電機関といわれています。
ミトコンドリアは発電による酸化ストレスに常時さらされていて障害が多発しますが、オートファジィー(自食作用)により細胞内でリサイクルされます。
細胞のアポトーシス(代謝)に重要な機能役割を担い、障害や欠損があると癌やミトコンドリア病を誘発します。
精子で16ヶ、卵子で100.000ヶのミトコンドリアを持つと言われています。

母系遺伝:母親の遺伝子に欠損がある場合、男子出産の50%の確率で発症します。女子出産の場合は50%の確率で保因者となります。理由はX遺伝子にあり女子の場合はXXで父親のX遺伝子が補い,保因者(キャリアー)にはなりますが発症はしません。X連鎖遺伝病と言うらしい。不公平な話だ!!

 
 

参考
細胞間の相互作用で良性腫瘍ががん化する仕組みを解明   科学技術振興機構・神戸大

ミトコンドリアの機能低下が周辺組織のがん化を促進する     神戸大 等

『前立腺がんの増殖亢進を引き起こすWnt-5a問題について

がん細胞の増殖率は、治療を行うごとに加速。(Fred Hutchinson Cancer Research Center)

脂質と血栓の医学 ミトコンドリア













 

2012年8月18日土曜日

がん細胞の増殖率は、治療を行うごとに加速。(Fred Hutchinson Cancer Research Center)




何を今更・・・と言いたくなるが、

がん細胞の増殖率は、治療を行うごとに加速する事実を『がん化学療法(抗がん剤)に予想外の現象、タンパク質分泌が増え治療耐性』との表題で5英医学誌「ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)」に掲載した。(2012080612:44 発信地:パリ/フランス
研究チームのフレッド・ハッチンソンがん研究センター、ピーター・ネルソン(Peter Nelson)氏は言う。
「がん細胞がWnt-16bを過剰発現していて、この因子が浸潤や増殖そして耐剤性に関与している。これを制御する事ができれば治療ができるのではないか、予想外の現象であった。」
(2012/8/6)http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2893696/9333620 



東大研究G高橋さゆり氏らによる『前立腺癌の増殖亢進を引き起こすWnt-5a』においてもアンチアンドロゲン治療においてWntシグナル経路を同定し、サイズで1.5倍、細胞数で約3倍増殖していた。(2011/3/7


放射線治療では・京都大学・原田浩 氏ら放射線腫瘍生物学グループが放射線治療後に高悪性度がんが3.5倍に増幅した事実を公表している。(2012/4/18)



ホルモン治療ごとにPSA値(前立腺がん特異的マーカ)の上昇率が加速している事が観察できる。初回の治療後には約3倍の上昇である。(2011/4/23)
http://ina-takasi.blogspot.jp/2011/04/psa-psa6.html 



 




  


























                                                      
                                          

致命的な前立腺NEがんの14%はホルモン治療の既往(治療による誘発)であり、67%は初診からの前立腺NEがん、19%が通常の腺癌とされた混在型としている。
(泌尿紀要 56:49-54.2010年)

以上に述べた不利益は治療により享受される多数の利益に比べ微細としているが、リスクが存在するのは事実で、これらのリスクは治療前に患者に説明すべきと強く思います。




                                                                                                                                                                                                                                                                                                        


                                                                                                              

2012年8月11日土曜日

副作用のない抗がん剤(そして、癌は風邪をひいたのか?ウイルス製剤)



前回の核酸製剤(十数のDNA,RNA核酸断片)は世界の多くで創薬途上にあり、一方、ウイルス治療ではHF-10=三重大学、G47Δ=東京大学、アドベキシン=千葉大学、Reolysin=パトリック・李(カルガリー大学)、2012年には実用化の予定とされていた開発コード『テロメライシン=岡山大』はTV報道もあってか特に有名で、副作用のない抗癌剤として多くのがん患者は期待したに違いない、が、ここにきてアンカードラッグから放射線アジュバンド(もしくは併用?)にシフトしだしている。


テロメライシンは、レオライシンと同様カナダのOncolytics.Biotech.Incによって創薬開発されているが、DNAアデノウイルス5型(エンベロープ無し・増殖能欠損型)をベクターとして、テロメアの活性しているがん細胞のみを風邪ウイルスに感染させてウイルスの持つグランザイムBなどでがん細胞を溶解、或いは細胞自殺を誘引させる。

抗ウイルス薬は不必要で、RNAウイルスに多い突然変異もなく、がん細胞の核内には入るがエンベロープ(スパイク)を持たないので染色体には組み込まれない。
ベクターとしているのでE1領域は除去され、代わりにテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)が組み込まれている。これによってがん細胞以外への感染は無い。


特徴としては、ウイルス感染は一過性とし、がん細胞の分化度を問わない。テロメラーゼ(酵素)が常時活性化している『がん幹細胞』にも有効であると思われる。
フェーズ1試験では安全性は確認済との事ではあるが、前立腺がん骨盤内骨転移ではガン患部へ 局所注入された場合、造血幹細胞への影響が多分に懸念されるがどうであろうか?


レオライシンは白金系抗がん剤抵抗性患者をリクルートしてフェーズ3(大規模)試験を見据えているが、テロメライシンは2008年フェーズ1から既に5年経過して尚、フェーズ3が見えないでいる。

下図は『がんサポート情報センター』からのテロメラーゼ代謝の度合いであるが、前立腺がんで83%、しかしこの数字は大多数の遅進行(がん細胞の代謝が遅い)を占める前立腺がんではtoo bigで、テロメラーゼ活性の望めない緩増殖な癌にはアンカーとは確かになり得ないだろう。

免疫性の反応
抗原提示細胞等による障害はあるが、ウイルスなのでB細胞などによる抗体は産生しない。が、然しCTL(ヘルパーT1細胞記憶)による防御の可能性は否定できない。つまり、炎症反応はあるが、複数回の治療は可能であると考えられる。
CTL記憶がなされてた時点で即耐剤性も獲得されるので、放射線で局所的に白血球を死滅させておくのも有効かもしれない。或いは放射線による増感作用を期待しているのかもしれない。
DNAウイルスの場合はTLR9(トール・ライク・レセプター)で認識され、細胞性サイトカインがTh1細胞を分化させる。
従って、造血幹細胞とともに、炎症性サイトカインが全身治療を困難とさせる原因である。 
免疫からの余談になりますが、日本のインフルエンザワクチンは殆ど効果が無いと言われています。理由は抗原と一緒にアジュバンド(免疫強化物質)が含まれていないためだそうです。
不活化ワクチンや生ワクチンの弱いものにするのが世界の大勢だとしています。



転移癌の50%程にP53(癌化した細胞を死滅させる抑制遺伝子)欠損があると言われている。三重大学のHF-10、 SiBiono社のgendicineは欠失されたP53(タンパク分子量 53k Da)を補いがん細胞をアポトーシスさせる。

G47Δ=東京大学は2011年3月18日被験者死亡事故発生。治験での直接的因果関係はないとし、現疾患の進行としているが、炎症悪化していたのは事実であろうと思われる。
中断無く進んでほしい。
 



参考

発癌性が強力なほど効果的な抗がん剤と放射線治療。そしてレドックス




Note


テロメア:染色体両末端(3‘ 5’)にあって遺伝子損傷保護CAPと思われてきたが、細胞分裂の回数券(ヘイフリィクによれば60回程度の分裂で細胞死する)説が現在の認識である。60回細胞分裂で115京の細胞を複製する。癌細胞の場合はテロメラーゼと呼ばれる酵素の常態活性化でテロメアのチケットが延伸され無限の分裂能を獲得し、癌は細胞死しない。
ヒトではテロメラーゼの活性は無に等しく、あっても微量で生命の根幹である幹細胞や生殖器官で認められるに過ぎない。


 

テロメアの証明:細胞60回分裂説(細胞数115京)があるが、まるでデタラメな説でも無い様である。細胞代謝は赤血球120日、心臓22日、腸管25日、最も頻繁なのが小腸で2日であるらしい(Ⅰ期M24時間G024時間)。成体細胞数(ケラチン化する細胞含め)60兆(実際に代謝があるのはそのうちの1兆/日であるらしい)が2日で総入れ替わりと仮定すれば100年間では360×100/2 ×60兆=108京。 1兆/日説なら60兆では60日で総入れ替えなので3.6京となる。一番タイトな計算ではやはり人の生理寿命は120年か・・・。


 


出典
がんサポート情報センター

参考
がんに対する遺伝子治療の現況と展望(岡山大学・藤原俊義 田中紀章)
ousar.lib.okayama-u.ac.jp/file/13974/120_321.pdf