2012年2月18日土曜日

PSAを半分にする裏技




今回もハゲ薬の続きです。ザクロに続いて(=_=)チックなお話し第3話・・・。

前回、2003年フィナステリド(2型阻害)で行われた試験(PCPT)のお話しをしましたが、このクスリ元来はアンチアンドロゲンとして開発されました。ハゲ薬での商品名はプロペシア。
外用薬としてはミノキシジル(ロゲイン)があり、リアップX5に使用されています。共にハゲ薬です。
プロペシアはハゲ薬としての認識でしたが、2007/3日経メディカルから意外な展開をみせました。
 
『プロペシア服用者の前立腺癌見落としに注意』
PSA値が半分近くに減少、上昇率に注目して評価すべき
男性型脱毛症治療薬のフィナステリド(商品名:プロペシア)。発売から1年あまりが過ぎ服用者も増えているが、前立腺癌特異抗原PSA)検査の際には注意する必要がある。フィナステリド服用者ではPSA値が低めに出やすく、前立腺癌の見落としにつながる可能性が高いためだ。』
『「フィナステリド服用者にPSA検査を行う際には、少なくとも検査値を2倍にするか、可能ならその上昇率で評価しなければならない」と語るのは、群馬大医学系研究科・泌尿器病態学助教授の伊藤一人氏。その理由は、プロペシアにはPSAの分泌を抑える作用があるからだ。』 (日経メディカルから)

ここで疑問!

プロペシアはPSAだけを特異的に減少させる作用があるのだろうか?

アンチアンドロゲンなので内分泌制御(血中ホルモン)で前立腺腺細胞そのものを退縮させ、結果PSA減少となるのではないだろうか?もし腺癌の存在があれば、当然癌細胞も退縮しなければならない。癌細胞の減少に従ってPSAの外分泌も当然減少する筈である。何故PSA値を2倍しなければならないのだろう?(テストステロンからDHTへの変換を抑制し、テストステロンは減少しないからと云う理屈だろうか。だが、これには多少無理があると思いますが・・・。)PSA詐欺のスタチンと同系列扱いには少し抵抗を感じます。
マリグナントな癌(GS8以上)の場合は元々PSAなどアテにならないのだから、PSA低下目的で服用しても何の意味も持ちません。

さて、その試験結果が下のグラフです。(日経メディカルから無断転写)
グラフからは24週で飽和状態を示し以降耐剤性(?)からかPSAは緩やかな上昇傾向に転じている。服用から6ヶ月で約4割のPSA低下を観察できる。

アメリカでの別試験ではーLancet Oncology 2007; 8: 21-25ーによると48週間後のPSA値が4049歳で40%、5060歳では50%減少するという結果のレポートもあり、一般市販薬でPSAの降下が可能である事を意味しているリアップは血管拡張剤との事ですのでPSA減少効果は期待できないと思います。

フィナステリドには服用によって、より悪性な癌の発現と云う疑念があるが、2003年フィナステリド(2型阻害)で行われた試験(PCPT)では、5mgを7年間飲み続けた結果であるのに対し、PSA低減目的ではプロペシアは1mg6ヶ月と実に低容量である。
低リスク(GS6以下)の癌とPSA値にはそれなりの正相関はあると、僕は思うんですが・・・。どうなんでしょう。

Notes
プロペシア服用でPSA値を2倍にしなければならない根拠はどこにもありません。もともと前立腺肥大症や前立腺癌治療薬をターゲットに開発されています。肥大症では偽陽性の上の倍加ですから無駄な針生研をしなければならない。もし癌があったとしても小容量の濃度ながら腺癌ならばダメージ(濃度に逆比例したPSA外分泌減少)でなく退縮して生検でHITしないと思われます。ホルモン治療中の患者のPSA値をn倍にして判断する医師がいるならば、再度考え直しますが・・・。プロペシアでPSA値を2倍にしろと言う医療機関は正直怖い。
プロペシア或いはデュタステリドは前立腺がんの化学予防に有益であることの証拠は認められていると思いますが・・・。

マリグナント癌 発生母地が不明な癌細胞(未分化、低分化癌)。細胞組織学的には前立腺癌では腺癌以外に基底細胞由来、神経分泌(NE)、 小細胞癌、カルチノイド腫瘍もあるようです。

DHT      ジヒドロテストステロン 活性型男性ホルモン。アンドロゲンが5αリダクターゼ(酵素)と反応してDHTを生成する。男性ホルモンの5~10倍と云う濃度。

引用元
プロペシア服用者の前立腺癌見落としに注意(日経メディカル)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200703/502676.html

2012年2月15日水曜日

毛はえ薬で前立腺癌が治るとの報道がなされましたが・・・。




前回は更年期障害を寛解させるザクロで前立腺癌が改善するお話をしましたが、続けて、今回は毛はえ薬で前立腺癌が治るお話をします。
213日の日経メディカルオンラインで以下の報道がなされました。
『無治療での経過観察(アクティブサーベイランス)が選択された低リスクの前立腺癌患者にα還元酵素阻害薬デュタステリドを投与すると、偽薬群に比べて前立腺癌の進行リスクが4割程度下がることが、二重盲検の無作為化試験REDEEMで明らかになった。カナダToronto大学のNeil E Fleshner氏らが、Lancet誌電子版に2012124日に報告した。
2003年フィナステリド(2型阻害)で行われた試験(PCPT)、及び2010年デュタステリド(1、2型阻害)で行われた試験(REDUCE)のFDA検証結果では、PSA値の低下及び癌の発症予防的効果は認めたが、より悪性度の高い癌の発現増殖を招き深刻な結果であった。と、何かでの記憶がありました。今回の発表での詳細は不明ですが・・・。同じ様な結果と思います。
理由は以下。

『ホルモン治療で効果が認められるのは分泌細胞由来の癌のみであり、悪性度の高い低分化癌は基底細胞や神経分泌細胞由来(TA細胞時アンドロゲンの影響を受けないで分化した細胞)が多く、増殖因子は分泌細胞死時のサイトカイン経路による脱分化の可能性があるのでは無いかと考えています。』

ジョンズホプキンス大学のDr. Patrick Walsh氏は言う。

『ジョンズホプキンス大学のDr. Patrick Walsh氏は付随する論説のなかで、デュタステリドにこれらの高悪性度の腫瘍を減少させる効果がみられなかったことには「いくぶん失望した」と述べた。また、同氏はREDUCE試験とPCPT試験で得られたエビデンスに基づき、デュタステリドとフィナステリドの効果がグリーソンスコア(GS56の腫瘍に限られているように思われることから、両薬剤は前立腺癌を予防するのではなく、致命的である可能性が低い腫瘍を一時的に縮小させるにすぎないと主張した。

もう、そろそろ、PSA再発の患者にホルモン治療薦めるのやめたら?

日経さん 色々な情報は感謝しています。でも、読者は医療関係者ばかりでなく、僕たち患者もいます。僕たちは知識も無く右往左往しています。その情報の選択、或いは治療の意思決定は常に命がけなのです。できればの事ですがポジネガ合わせた報道を希望したいと思います。



Note

フィナステリド・デュタステリド  低単位アンチアンドロゲン で、発毛・育毛剤に使用されています。穏やかな薬効です。

FDA アメリカ食品医薬品局

サイトカイン 器官を介在しない細胞間の物資情報のデリバリィー。

参考文献・資料

『日経メディカル』
デュタステリドが低リスク前立腺癌の進行を抑制
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/lancet/201202/523602.html
「海外癌医療情報リファレンス」
フィナステリドの前立腺癌予防効果が立証
http://www.cancerit.jp/xoops/modules/nci_clinical/index.php?page=article&storyid=367
「海外癌医療情報リファレンス」
デュタステリドは前立腺癌リスクを低下させる
http://www.cancerit.jp/xoops/modules/nci_clinical/index.php?page=article&storyid=441
『MAB(ホルモン療法)で前立腺癌の転移を誘発促進させるネスチン』について
http://ina-takasi.blogspot.com/2011/05/blog-post.html