2011年3月17日木曜日

ED治療薬(勃起を促すとPSAが上昇する。は本当か?)


『PSA難民・・・』ではLH(黄体ホルモン)、ED治療薬(PDE_5阻害薬)について触れましたが、今回補足を述べます。


バイアグラ・シアリス・レビトラなどのED治療薬はPDE_5の活性化(勃起した状態を元の自然な状態に復旧させる働き)を阻害する薬(サプレッサー)です。勃起を促進させる薬ではありません。

前立腺がんの手術などで性的能力に障害を生じた場合などに処方されますが、ドライエジェクション(少々品位に欠けますが“空射ち”と訳してください)が改善される事はありません。

日本のED治療では、PSA値とED治療に明確な因果関係は無い。との判断で、処方の根拠は以下のBJU.INT(英泌尿器科学会国際学会)の報告内容に準拠しています。要は男性ホルモンで勃起を促してもPSA値に変動はないので、従って、その持続時間延長の目的薬はなんら抵触しない。が理由と思われます。

Coward RM, et al. : BJU Int.103 : 1179-83,2009
加齢男性性腺機能低下症(LOH)患者にテストステロン補充療法をしても、5年間のフォローにおいてPSA値は変化しなかった。また、前立腺癌の発生率も上昇しなかった。一方、性機能やQOLは改善し、総コレステロール値の低下がみられた。

一方では Prostate Specific Antigen (Michael Brawer AND Roger Kirby )なる解説書では、
視床下部ー脳下垂体ー性腺系
視床下部ー脳下垂体ー性腺系に影響を及ぼす因子が血清PSAレベルに対し重要な影響を及ぼしている。前立腺上皮体に言えることであるが、PSAは男性ホルモンのコントロール下にあり、内科的或いは外科的去勢を行うとPSAレベルが大きく低下する。例えば、良性疾患で径尿道的前立腺除去(TURP)を行うと、血清PSAレベルが有意に低下する。

どうもMr、マイケル陣が有利な論理展開のようです。PSAは癌特異ではなく正常細胞でも大きく変化するのは確かなようです。従って、勃起や射精はPSA上昇を誘導します。もし癌細胞があれば、増殖を促します。

前立腺がんのPSA再発を避けるには、男性を諦めるのが一番です。PSA再発では抗男性ホルモンやLH-RH遮断薬そして放射線が待っています。ほぼHOPELESSな帰結でしょうか・・・。
僕は苦し紛れに喘いでいます。周囲からは往生際が悪いなどと罵声を浴びながらも救いの道をいまだに模索しています。結論的には『PSA再発=癌とは限らない』と(苦し紛れのこじつけ論的な印象もなくも無いのですが)、暫くこれで行こうかと思っています。

注)
去勢後PSAの不可解な上昇原因の可能性として、副甲状腺ホルモンとの発表がなされましたが、他にも大きな理由があると思います。
PSA値は副甲状腺ホルモンでも上昇 (日経メディカルより)2012/3/8追記

PSAは3種類ありますが、上記では全てTPSAです。良性細胞PSAはFREE-PSAで多く検出すると言われています。F/T 比を測定すれば全体像が明確になるかもしれません。テストステロンは主たる男性ホルモンです。視床下部から脳下垂体にホルモンの制御指令をします。性的興奮である場合は性腺系に働きかけます。しかし、血清中のテストステロン濃度が、前立腺組織周辺、或いは細胞に与える影響や反応と相関しているとは言えません。受容体も含めたシステム全体の機能性の問題と思います。

前立腺上皮: 果実でもそうですが、基底層にはいろいろな制御機能とかがあり、被膜目的だけではありません。前立腺の基底細胞層だけが残っても、再度アンドロゲンを与えると元の前立腺に
戻ると言われています。幹細胞、或いは未成熟な未分化細胞(前駆細胞)があるだろうと思います。

径尿道的前立腺除去(TURP): 前立腺肥大などをレーザで切除する術式です。




参考

射精でPSAは減少する。理由は精液が枯渇するから。(Effect of ejaculation on PSA levels)

1998 Mar;51(3):455-9.
The effect of ejaculation on prostate-specific antigen in a prostate cancer-screening population.
この論文では射精とPSAは無関係と結論しています。

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