2011年3月2日水曜日

全摘後のPSA再発は約半数でその60%以上は非転移もしくは非がんである。(前立腺がん)

RRP1次処理後におけるPSA再発は約30%ほどであり、その殆どは術後1ヶ年以内である事が、各施設で報告されている。では術後15年ではこの数字はどのように変化するのであろうか。そして、そこでは再発率30%は幻想にしか過ぎないことが理解できる。
日泌会・厚生科学研究班編/医療・GL(06年)/ガイドラインでは症例数:T1、T2、T3ステージ、サンプル数合計1997において15年間のトレサビリティで以下の結論を導き出した。
『前立腺全摘除を施行した症例の15年の非転移率,非癌死率82,91%である.PSA failureとなった症例において,5年間で明らかな転移を有さない症例は63存在する。PSA failureとなった症例の検討では,Gleason Score8未満,手術後2年より経過したPSA failure,Gleason Score8未満でPSAのdoubling timeが手術後10ヶ月以上の症例ではその他の症例と比較し有意に転移が出現しない。』
PSA failure後の臨床経過については、
5年間で明らかな転移を有さない症例は63.GS8未満,手術後2年より経過したPSA failure,GS8未満でPSADTが10ヶ月以上の症例は有意に転移が出現しにくい.』
この文脈(context)からは直接的な言及(リファー)はないが、5年経過で48%がPSA再発と書きなおせる。(下図フロー参照)
15年経過した時点で非転移が82%と統計されている事は、PSA再発とされた48%の半数以上(63%)が結果的に転移していなかった意味になる。術後5年で非転移とされ、それ以降に転移とされたケースはレアであろう。従って事実上の再発は18%で、PSA再発(48%)と診断された患者のうち63%は癌が無かったとするのが自然である。グラフからはこの63%は転移待ちなのですが寿命か癌死かどちらが早いか、患者の年齢で決定されるでしょう。
私の言う幻の癌とは、この63%の事を指す。痛くも痒くもないない癌(ラテント)。
このようにして、この文脈を俯瞰してみれば大学系病院の公式発表されたPSA再発率20~30%では多くが転移となり、患者は理解と判断に苦しむのである。

サンプル指数を100人とした場合の図式を下図に示した。






















本邦に於ける追跡調査では、『根治的前立腺全摘278症例の臨床的検討』として三重大学大学院医学系研究科腎泌尿器外科学、愛知県がんセンター中央病院泌尿器科、稲荷山病院泌尿器科の合同チームが2009年に「泌尿紀要 55、531ー537」で発表しています。Abstractは下記。

(今回278例の前立腺全摘症例の成績について検討した.患者全体での全生存率,疾患特異的生存率は10年でそれぞれ96.3,99.3%であり,5,10年PSA 非再発率はそれぞれ67.9,55.1%であった.PSA >20,生検時Gleason sum 7,8∼10 がPSA 再発に対して有意な危険因子であった.neoadjuvant 内分泌療法の有無はPSA 再発に対して有意な危険因子とはならなかった.)

このコンテクストでもPSA再発率は約半数を記録している。尚、OSは96.3%を記録している。
(再発定義や患者ユニホミティーは異なり、単純比較はできませんが、参考に。)
『根治的前立腺全摘278症例の臨床的検討』

泌尿紀要:51:575-580/2005年では、 5年PSA非再発率  pT2=84.8%   pT3=35.9%。
pT3では64%がPSA再発である。

PSA再発でのホルモン治療後ではPSA20や30は可愛いほうで、PSA100近くの患者もいます。が、癌の姿も、かたちも、影もありません。全摘出後のPSA上昇は説明がつきませんが、治療は開始されます。放射線でのサルベージ(局所巣)では約50%の奏功率ですが、癌細胞である証拠はありません。これを説明できる医師はいないでしょう。
上皮細胞である限り、治療で細胞を殺傷すれば、傷の修復と同じで通常の代謝よりも頻繁に細胞復旧し、PSAは上昇します。つまり、全摘前のPSA上昇率よりも治療後は数倍の上昇率があっても
当然であり、癌細胞に限った事でもありません。むしろ、間質を伴った良細胞のほうが説明がつくと僕は思うのですが・・・。但し、神経温存の場合でもPSA<0.5の様です。


Notes

63%はPSA 4あっても転移なしの状態である.従って必ずしも癌再発とは言えない.』
GL06日泌会

『5年間で明らかな転移を有さない症例は63%.GS8未満,手術後2年より経過したPSA failure,GS8未満でPSADTが10ヶ月以上の症例は有意に転移が出現しにくい.』
日泌ー厚生 GL06

 

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