前立腺特異坑原蛋白(PSA)で発見された前立腺がんの60%が、胸部レントゲン写真あるいは痰によって検出された肺がんの50%が、マンモグラフィで検出された乳がんのおよそ25%が、生涯生命リスク・及び発症の乏しい診断インフレで、前立腺がん年代別ラテントでは40歳で34%、80歳で30~70%と推定される。(j1)
今回は2010年5月5日JNCI ( Journal of National Cancer Institute ) に掲載された論文の紹介です。タイトルは 《 Overdiagnosis In Cancer 》です。
筆頭著者は復員軍人省医療センター公衆医学のGilbert Welch, と William C. Black の両氏で、彼達のグループはその要約のなかで「がんの過剰診断」について、無言の病気の発生源の存在と、それを発見しょうとする作用が正帰還的にカスケードし、インフレーションを誘導する。と述べている。それは、丁度 「 山があるから登る 」 と言っているのと同じかも知れない。その彼らの無作為試験の分析で得られた結果の一つがスクリーニングで過剰に産出されるガンの存在でした。そのラテントのお話をします。
グラフは事故による死亡者のアメリカ人男性 ( 薄黒色=525人 ) とギリシャ男性 ( 黒色=212人 ) の剖検で発見された前立腺がんラテント ( LPC ) の年代( 横軸 ) 別ー検出率です。ギリシャ人男性の前立腺がんラテントが少ないのは、もともとギリシャの罹患率 ( 発症者 ) が少ない事実は有名で (j2)、トマトがその環境因子の一つと言われています。前立腺がんラテント保持率は日米とも同じ位と言われているので、PSA以外の他の臨床的証拠が無かった場合の対応プログラムは、70歳以上では経過観察だけで、 ケースによっては画像診断も不要なのかも知れない。
またがんの早期発見の有益性検証試験、米国PLCO 《 Prostate ( 前立腺 ) , Lung ( 肺 ), Colorectal ( 結腸 ), Ovarian ( 卵巣 ) 試験 》、欧州7ヶ国試験ERSPC 《 European Randomized Study of Screening for Prostate Cancer 》、そしてイエテボリ・スタディ ( スウェーデン ) でのエビデンステーブルに記載された介入群と対照群の全死因死亡率に有意差は無いとされています。
この論文では、最も信頼できる集団ベース等から30年間の A) 甲状腺がん、 B) メラノーマ、 C) 腎臓がん、 D) 前立腺がん、 E) 乳がん、この五つのがんの新規診断患者数と死亡者数の推移をグラフにしています。人口調整グラフです。米国の、この年代の時代背景としては、巨額の予算が計上され1977年にマクガバンレポート、1979年には前立腺特異抗原PSA単離成功。1990年にはOTA ( office of technology assessment ) レポートが発表され、2006年にはFDAはトランス脂肪酸を規制するなどアメリカ政府は癌撲滅を国家事業としました。
Gilbert Welchとその仲間達は 「 罹患率と死亡率とは正相関関係にあり、競合関係に無い。」と考えていて、死亡率が水平にあるのは 「 Overdiagnosis 」 の結果と説明しています。
「 Overdiagnosis 」は最近の医学文献での用語で、進行の遅い癌、退縮するかも知れない癌、つまり 「 健康リスクが長期間に渡り出現しないだろう癌の検出 」 を表現しているのではないかと思います。或いは、もう一つの定義としてpseudodisease ( 擬似病 )の検出とも述べています。概念的には 「 ガンもどき 」 のアメリカ版と言う印象です。 じぇジェ~じぇ~!! \(◎o◎)/!
前立腺がんの過剰診断は60%と言いましたが、米国PLCOよりもコンタミの少ない欧州ERSPCの分析からでは、Overdiagnoses67% と算出しています。米国のデータ分析で、人種間差で対日本人の適応可否には言及されていませんが、罹患者群を母数としたoverdiagnosesの相対的な比率は近く、人種間差は無いのではないかと思います。
July 2009(j3)のレビューでもその中でリサーチャーは60歳代の前立腺がんラテントは60%と発表しています。
1996年アメリカはがんによる死亡数が減少したと発表したが、その理由を食事脂肪摂取量の低下とした。(j4)OTAレポートの6年後です。Gilbert Welchは過剰診断と前立腺がん死亡者数減少について、スクリーニング効果の可能性には触れてはいたがそれ以上の踏み込んだ言及はありませんでした。
参考に、米国の1975年~2009年間脂肪消費量と前立腺がん死亡者数トレンドをレイャーさせたのが下グラフです(j5)。
1993年以降の前立腺がんの罹患者数減少はPSA検診の普及期で、多人数が短期間でスクリーニングされた結果、母集団の減少を招いた影響もあるかも、と考えられます。
前立腺がんに限ってではありませんが、高悪性度がんの発現や転移を防止するには、サイトカインIL-6即ち、アラキドン酸やリノール酸のω6多価不飽和脂肪を摂食制限しPGE2(プロスタグランジン)を抑制させ、リノレン酸:オメガ3(DHA)等を摂取することによってアレルギー体質を中和させる事が重要です。下のグラフ参照。既に米国のヨーグルトの消費量事情は全乳消費量と逆関数で上昇しています ( 特にグリーク・タイプ:ギリシャタイプが好評な様です )(j5)。こうした食事の嗜好変化が前立腺がんの死亡者を減らしているとした証拠は集まりつつあります。無脂肪ヨーグルトの菌体成分(死菌を含め)は樹状細胞に作用してアレルギー体質を改善しガンの悪化予防に効果的ではないかと思います。ヨーグルトはトランス脂肪酸を含有する事から悪の権化(特に前立腺癌患者から)の様に頻繁に言われますが、脂質含有量とトランス脂肪酸含有量を食パンと比較しました。マーガリンは製造工程で水素化しますので、トランス型脂肪酸が多量に生成されます。j7
引用:(財)日本食品分析センター(食品安全委員会委託事業)(2007) 、(独)農業・食品産業技術総合研究機構・(財)日本食品分析センター(農林水産省委託事業)(2008)
脂質 g/100g トランス脂肪酸 g/100g
ロールパン 7.9~22.4g 0.14~0.47g
マーガリン 81.5~85.5g 0.94~1.3g
食パン 2.8~7.1g 0.046~0.27g
ヨーグルト 2.7~4.1g 0.065~0.11g
アレルギー性体質は転移し易い でも云いましたが、”発癌予防” と ”進行予防” (転移や憎悪) とは違っていて (免疫機序と同様)( j6) 、対処方法が異なると思っています。なので、ヨーグルトが発癌(罹患)防止にも有益かどうかは僕には結論できません m(_ _)m 。事実グラフからもヨーグルト消費量増加と死亡者数減少は相関関係にあると見做す事は可能ですが、罹患者数とは微妙だなァ~?と思います。
参考
前立腺がんの罹患者数と死亡者数の推定
データソース: 地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(1980-2006年)、国勢調査人口・推計人口(1980-2009年)、国立社会保障・人口問題研究所将来推計人口(2010-2029年)推計モデル: 年齢、暦年、出生年を説明変数としたポワソン回帰モデル
Footnotes
J2 明治大学 鈴木研究室 世界の前立腺がん発症件数
(2013/8改訂版)によれば「前立腺がん人口調整発症者数」は米国は17番目で83.8/10万人。ギリシャは111番目で16.2/10万人となっています。因みに日本は81番目22.7人/10万人となっています。
(2013/8改訂版)によれば「前立腺がん人口調整発症者数」は米国は17番目で83.8/10万人。ギリシャは111番目で16.2/10万人となっています。因みに日本は81番目22.7人/10万人となっています。
j3 July 2009 Overdiagnosis in publicly organised mammography screening programmes: systematic review of incidence trends
j4 前立腺がんの予防(PDQ®)
プライアス研究
2006年オランダから始まったスタディで、現在欧州においてPSA監視療法を検証するPRIAS study が進行中で,この研究に日本人のデータを合流させる研究(PRIAS-JAPAN)が2010年から実施されています。Gleasonスコア6以下,陽性コア2本以下(陽性コアでの腫瘍占拠割合50%以下)で,PSA 10 ng/mL 以下,臨床病期T2以下が患者登録できます。
2006年オランダから始まったスタディで、現在欧州においてPSA監視療法を検証するPRIAS study が進行中で,この研究に日本人のデータを合流させる研究(PRIAS-JAPAN)が2010年から実施されています。Gleasonスコア6以下,陽性コア2本以下(陽性コアでの腫瘍占拠割合50%以下)で,PSA 10 ng/mL 以下,臨床病期T2以下が患者登録できます。
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