2011年4月23日土曜日

苛めると癌は怒る! は本当か? うれピクない3倍返し

全摘後PSA再発と言われて、ホルモン治療を2年で放棄した例がある。
術前PSA=6.8 GS=9のCaseである。ホルモン治療を一度でもした場合、癌は変質するであろうか?治療放置後のPSAは?そして5年経過した時点での病態は?。
通常のホルモン治療(間歇的投与を継続)をした場合との2例で癌の変質をみてみる。

下グラフをみても理解できるように、通常一旦ホルモン治療をすれば、再度PSAが上昇する場合の傾斜(増殖度)は前回の傾斜の約3倍になり、治療前のPSA上昇傾斜を維持しようとすれば薬剤の投与量も追次的に増やさざるを得ない。半減期の変化にも顕著に現れている。
『癌をいじめると、癌は怒る』と近藤誠氏は言っているようだが、ある意味で本当かも知れない。(但し、PSAと癌の正相関が前提条件で、現時点では確実に担保されていない)

やがて何年か後に必発の『PSA再燃』でも同様で、死ぬまで連綿と放射線やホルモン、抗癌剤と治療を続けざるを得ない。実に麻薬的な治療と言えるが、患者には他に選択肢は無い。PSAを再発予測因子とする以上、これは事実である。
(癌は耐剤性を獲得し、或いは新生血管を得て進化してゆく過程も、免疫から逃走する仕組みも、実は体内での胎児の成長と同じプロセスを形成する。精子も母乳もPSAも免疫から言うと全て他人(非自己)としたタンパクである事からも充分納得がいく。だが、PSAの対ホルモン特性は必ずしも癌細胞因子とは断定できない。)

通常のホルモン治療のΔPSA上昇のCASE(全摘後放射線奏功無く内分泌治療 癌再発なし)




























次のケースはホルモン治療を2年で放棄した場合のPSA変動グラフで、拒否後のPSA上昇は当然であるが、予想では4年経過でRRP以前の癌性の方が断然と有利になる。

治療を途中放棄したPSA推移とPSA予想曲線(破線は予想曲線)






























このケースでも記録によると全摘後PSA20で何ら症状は無く、治療拒否4年経過後でも健在との事であるが記録はPSA20の後で途切れている。以後経過は不明。
GS9ではPSA10でも転移は珍しくなく、PSA20で無癌は一寸不可解ですがPSA上昇データにはそれなりの信憑性がありサンプルとしました。(半減期dataにはやや疑問がありますが)逆転時のPSAは予想で50となります。冒頭での通常ホルモン治療のケースでもPSA20で無癌です。この2件ではPSAの持つ意味(再発予測因子)は無意味或いは否定となりますが、これらのグラフからは一旦ホルモン治療を行うとPSAの上昇傾斜は治療前の3倍の増殖速度となる事がわかります。
(東京大学からWnt-5aでの癌サイズ増大が1.5倍と発表がありましたが、細胞総数では丁度2.5倍になります。或いは、Nestinが関与している可能性もあるのかも知れません。)
残念ながら止める手立てはありません。


PSA再発→臨床再発8年→癌死5年について

何故、癌の姿がなく、PSAだけが顕著に出現するのでしょうか、路頭に迷った旅人は逡巡しますが原点に戻るとき、例え転移、若しくは残留癌があったとしても、『前立腺がんは進行が遅い』と教わった事に気がつきます。30~40年で一人前の癌に成長する場合もあり『再発から臨床癌中央値8年、癌死5年』と言う日泌会・厚生GLの報告には素直に頷けない。臨床癌1cm~4cmでは癌細胞の分裂は31回~34回を要します。これはPSADT(PSAが2倍になる速度)4回/年、即ち3ヶ月でPSAが倍にならなければ実現不可能です。『PSA20以下では99%転移なし』の報告があるように、GS9以下では原発出現から即転移とはならない。多くのRRP手術の悪性度はGS8以下ですから論理的整合性が無く、転移癌はエリートだけ(混合型からスピンアウト出来る有能力癌細胞だけ)とは言え術前の癌性に由来する訳ですから、論理的飛躍の域は否定できません。術後の過剰(癌に反映していない)なPSA産生のメカニズムは明解にされていません。いまだにPSA再発(所在不明な癌)が理由とされています。





Notes
1)Nestin  『MAB(ホルモン療法)で前立腺癌の転移を誘発促進させるネスチン』について
http://ina-takasi.blogspot.com/2011/05/blog-post.html

2)Wnt-5aの発表概要:LINK
東京大学分子細胞生物学研究所(所長:秋山徹)の核内情報研究分野の高橋さゆり(大学院生)と加藤茂明教授らは、抗男性ホルモン剤療法に抵抗性を示す前立腺癌において、高頻度で見出される男性ホルモン(アンドロゲン)受容体(AR)の遺伝子変異をマウスに導入したモデル動物を確立した。このモデル動物を用いて解析した結果、「Wnt-5a」という細胞外分泌タンパク質がAR 点変異体と協調的に作用し、通常は男性ホルモン遮断薬であるはずの抗男性ホルモン剤に応答して、前立腺癌の増殖亢進を引き起こすことを実証した。(2011/4/28追記)

3)PSA再発治療のデータでは治療継続のデータはその特性から信憑性があると思います。治療放棄したかたのデータの確証は得られませんでしたが、他に同事例はなくサンプルとしました。

4)PSA値と癌病勢の相関は担保されていません。PSA予想特性は予想の域内です。

5)PSA再発は無視して良いとの主張ではありません。あらゆる論議があって当然と考えております。再発と告知された、或いは既に治療中の人々のメンタルサプリメントに、或いは参考にでもなれば幸いです。事実私もPSA再発とされた罹患者であり、圏内の人です。

6)データを許可なくお借りしましたが、ご笑許ご理解賜れば幸いです。

関連記事
『前立腺癌の増殖亢進を引き起こすWnt-5a』問題について
http://sites.google.com/site/inascienceart/sankou-bunken--shiryou/--mab-horumon-ryouhou--de-zenritsusen-gan-no-zoushoku-koushin-wo-hikiokosu---mondai-nitsuite
加藤茂明グループ等による不正論文(捏造)疑惑がありますが、当論文の適否は決着していません。(2012/3追記)
前立腺癌における神経内分泌細胞の発現とその臨床的意義(京都府立医大)
進行前立腺通常型腺癌における神経内分泌腫瘍細胞の存在はホルモン療法にお
ける再燃の危険因子と考えられた。

抗がん剤で耐剤性 癌増殖  Nature Medicine から(2012/8/17)

0 件のコメント:

コメントを投稿