2010年6月12日土曜日

胎児と癌の違い (2010:8:9更新)


癌と胎児の違いです。癌タイジのお話ではありません。
結論から先に言いますと、身体の自己から見れば兄弟の様なもので大差は在りません。
胎児は半分他人で大きい移植片ですが、自覚症状としての緩やかな拒絶反応(つわり)がある分癌より良心的と言えるでしょう。癌の発育に自覚症状も伴わず、免疫に排除され無い理由としては、胎児が母親の免疫システムからの攻撃を受けないようにする仕組みと同じです。つまり胎児は自分の標識HLA(人白血球抗原:一致するのは一卵性双生児ぐらい)を胎盤が隠して母親の免疫システムから胎児の身を守るのです。
HLAの無い細胞は自然免疫に攻撃されますから、自然免疫にたいしては胎児由来に発現するHLA-G(抗体)と言う免疫抑制を胎盤が生成して母親の自然免疫から退治を守ります。(a)


で、癌はと言いますと、まだ免疫が完成されていない胎児の時から腸粘膜などに幾つかの癌抗原を作り、すでに自己としていたのですから、癌に対する免疫の機能は働きません。胎児性癌抗原と呼ばれるものが此れです。食道ガン、胃ガン、結腸ガン、直腸ガン、膵ガン、胆道ガン、肝細胞ガン、肺ガン、子宮ガン、卵巣ガン、尿経路ガン、肉腫、白血病などは免疫を期待する事は出来ません。元々、胎児の頃から自己としていた訳ですから。見境の無い凶暴な自然免疫(NKキラー)からでさえ逃走する訳ですから、もう、とても手に負えません。

免疫だけではありません。胎児が作る新生血管も、癌が転移していく為に癌が作る新生血管(癌細胞が血流に乗って転移する為に癌は新しい血管を作り末梢血管等に接続します)も同じ因子(VEGF)が関与します。リンパ管もやはり同じです。胎児と癌は同じ様に成長してゆきます。


外科手術こそが最大の免疫療法であると故多田富雄氏は述べましたが、その文脈の流れのなかで 「 発癌させた免疫正常ネズミ(野生型)から取り出されたガン細胞を培養し、できた細胞株を再度元に戻した(移植した)ら免疫が発動し癌が消えた。」と、言う。ウソの様な話ですが事実として報告されていて、これは自然発生したがんの細胞組織に免疫システムは機能しない(非力の)証拠の一つとされています。(故多田富雄氏:免疫の意味論)
この事は、受精卵から胚葉に自然卵割され上皮細胞様形成していく胎児にも、ガンと同様に、免疫は非力なのではないかと思います。


notes
(a):胎盤は胎児由来の細胞と母体(子宮粘膜)由来の細胞が相互に作用して形成されます。母体側の血球(母体血)は胎児側抹消血管に直接接続されていなく、胎児側由来の胎盤膜(栄養膜細胞)を介して胎児側血管から臍帯に運ばれます。この胎盤膜細胞表面抗原提示(MHC)がなく、或いはLHAーGを発現させ母体側免疫システムから胎児を免疫から防御します

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